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僕たちは
30年前に
恋人同士だった

若かった2人
未熟だった2人

でも
だからこそ

出会った瞬間から僕たちは
激しく愛し合うことになった


愛は全てを
乗り越える

そう信じていたが

僕たちにも乗り越えられない
現実の壁というものは存在した


そして
彼女は去った

僕の前から
あっけなく


あれから
30年も経つというのに

いまだに彼女のことを
思い出さない日はない


彼女は
30年前のままで

僕もまた
30年前のままで

人間の記憶というのは
当時そのままが刻印されるのだ


だけど現実の僕は
30年前とは大きく変わっている


年齢を重ね
経験を重ね

今では
愛する妻も
愛する娘たちもいる

仕事も順調で
幸せを絵に書いたような
暮らしをしている


だから彼女も
30年前の彼女は
今どこにも存在しない


美しく
賢かった彼女

たくさんの
夢を抱えていた彼女


彼女なら
その全てを
手に入れているはず


僕が愛したのは
30年前の彼女で

僕が愛されたのは
30年前の僕で


でも愛というのは
どれだけの年月が流れようとも

心の奥深くに
「温かさ」として
永遠に息づいているものなんだ